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解説 江戸の風雅”水琴窟の水音” 古来、日本には遠方からの梵鐘の余韻を楽しんだり、松風の音に喜んだりするようなわずかな反響や余韻を純粋に鑑賞しようとする嗜好があり、人々は極めて繊細,な感覚をもっていた。この風雅な感覚が水琴窟を造らせたものであろう。 水琴窟は庭の手水鉢(ちょうずばち)や蹲裾(つくばい)などの近くに小さな洞窟を造り、そのなかに水滴を落として、水音を洞窟の壁面に反響させ、地上に漏れてくる幽かな響きを楽しむ装置である。日本庭園の趣をより高めようとする技法であり造園技術の最高傑作の一つと言えよう。 水琴窟が庭園を構成する技法として用いられたのは、江戸時代のことだといわれている。江戸時代中期の作庭で、国の名勝に指定されている′鳥取県東伯郡羽合町の尾崎氏庭園には、縁先の手水鉢の前に現存している。明治時代になって盛んに取り入れられたようであるが、漸次衰退の一途をたどり、現在では、全国でも残存しているものは数少ない 裏千家仕様のつくばい |